こんにちは!ふじもと社会保険労務士事務所です。
新年度がスタートして2か月が経ち、職場環境も少しずつ落ち着いてきた頃ではないでしょうか。新入社員の受け入れや人事異動への対応など、慌ただしかった月を乗り越え、日常の業務のリズムが整ってきた企業様も多いかと思います。
こうしたタイミングで確認しておきたい制度のひとつが、「有給休暇」です。
有給休暇は、従業員の心身のリフレッシュやワーク・ライフ・バランスの実現に欠かせない制度であると同時に、企業にとっても適切な管理が求められる重要な制度です。
制度自体は広く知られている一方で、付与のルールや管理方法については曖昧になりがちな面もあります。また、2019年4月の法改正により、年5日の取得が義務化され、企業側の管理責任もより重要となっています。
本記事では、有給休暇の基本的な仕組みから、実務で押さえておきたいポイントまで整理していきます。
有給休暇とは?
年次有給休暇(以下「有給休暇」)は、労働者が出勤日に労働を免除される制度です。休暇中であっても、通常勤務と同様の賃金が支払われる点が特徴です。付与対象者や日数についても法律で定められており、企業ごとの裁量で自由に決められるものではありません。
さらに、2019年4月の法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、年5日の取得が義務化されています。企業は対象者ごとに取得状況を管理し、確実に取得させる必要があります。
一方で、有給休暇の取得状況を見ると、まだ課題も残っています。
厚生労働省が公表した「令和5年就労条件総合調査」によると、期間の定めのない労働者(パート・アルバイトを除く)の2022年の有給休暇取得率は62.1%で、1984年以降で最も高い水準となりました。
しかし、政府が掲げる目標である70%には届いておらず、企業としては引き続き取得促進への取り組みが求められています。
有給休暇を付与する対象者
有給休暇を付与する対象者は、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、次の要件を満たす従業員です。
① 入社後、6か月間継続して勤務していること
② 付与日前の一定期間において、全労働日の8割以上出勤していること
※初回付与時は「入社後6か月間」で判定します。
出勤率の考え方
出勤率は、次の式で算出します。
出勤率 = 出勤日数 ÷ 全労働日数
出勤日数に含めるもの
- 有給休暇を取得した日
- 業務災害による休業日
- 産前産後休業
- 育児休業、出生時育児休業、介護休業
全労働日から除く日
- 会社都合による休業日
- 本来休日である日の休日出勤
- 正当な争議行為による不就労日
- 不可抗力による休業日
有給休暇の付与日と付与日数
有給休暇は、入社後6か月経過時に初めて付与されます。
その後は、この日を基準として、1年ごとに継続勤務年数に応じた日数が付与されます。
原則の付与対象
以下のいずれかに該当する場合は、原則どおりの日数が付与されます。
- 週の所定労働日数が5日以上
- 週の所定労働時間が30時間以上
- 年間の所定労働日数が217日以上
| 勤続勤務年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
比例付与となる場合
次の①②いずれかの短時間勤務の従業員は、所定労働日数に応じて下記日数が付与されます。
① 週の所定労働時間が30時間未満かつ週4日以下勤務
② 年間の所定労働日数が216日以下
| 週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数 | |||||||
| 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 | |||
| 4日 | 169日~216日 | 付与日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
| 2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
| 1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | |
有給休暇取得日の賃金
有給休暇を取得した日の賃金は、次の3つの方法から選択できます。どの方法を採用するかは、あらかじめ就業規則で定めておく必要があります。
通常の賃金(最も一般的)
通常勤務した場合と同じ賃金を支払う方法です。
月給制の場合はそのまま支給できるため、実務上もっとも扱いやすい方法です。
平均賃金
直前3か月の賃金総額を基に計算します。
- 賃金総額 ÷ 暦日数
- 賃金総額 ÷ 労働日数 × 60%
→ 高い方を採用
標準報酬月額の1/30
健康保険の標準報酬月額を基に算出する方法です。 ※労使協定の締結が必要です
有給休暇の管理方法
企業には、有給休暇管理簿の作成・保存義務があります。
保存期間:付与期間中+満了後5年(当面は3年)
記載が必要な項目
- 付与日(基準日)
- 取得日数
- 取得日
※勤怠システムでの管理も可能です(必要項目が確認できればOK)
よくある質問
Q1 雇用形態が変わった場合の付与日数は?
付与基準日時点の労働条件で判断します。
Q2 どの有給から消化させる?
企業のルールで決定可能です。一般的には「古いものから消化」が多く採用されています。
Q3 有給休暇の買上げはできる?
原則不可ですが、以下は例外的に認められます。
- 法定を超えた部分
- 退職時の未消化分
- 時効消滅分
Q4 取得理由は必ず提出させられる?
できません。有給休暇は労働者の権利のため、理由による制限はできません。
有給休暇を取得しやすくする取り組み
- 半日単位の導入
- 時間単位の導入(※労使協定が必要)
- 計画的付与
- 取得推奨日の設定
- 付与基準日の統一
これらの取り組みにより、取得率の向上と管理の効率化が期待できます。
おわりに
有給休暇は、制度を正しく理解し、適切に運用することが重要です。管理が不十分な場合、法令違反や労使トラブルにつながる可能性もあります。一方で、有給休暇が取得しやすい環境は、従業員の満足度向上や定着率の改善にもつながります。
自社の運用に不安がある場合は、制度の見直しや管理方法の整理から進めていくことをおすすめします。
